国語を学ぶということ 予告編

2023年10月3日

 皆さんはじめまして。Zukkiと申します。この度、中学受験指導において二十年来の盟友である山根克宏先生の依頼を受けまして、主に国語の学習法について定期連載を請け負うことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。私は現在首都圏のある進学塾で指導にあたっておりますが、そこのレギュレーションの関係上本名を明かすことが困難なため(誠に恐縮です)、筆名でご容赦を願いたく存じます。その分、他では聞けないような中学受験や国語の学習に関する「正味な話」を面白く、皆さんの元気がわいてくるようにお伝えしていきたいと思います。

 私はもうかれこれ三十年近く受験指導の世界に携わっていますが、国語の学習に関する悩みを相談されることは今も昔も変わりません。つまり、「どうしたら国語ができるようになりますか?」と、生徒たちからも親御さんたちからもかなり切実なトーンで問いかけられる訳です。これは今後の連載で詳しくお話ししていきますが、国語は「正しい方法に乗っ取って」、しかも、「本気で」勉強する生活を継続して概ね三か月から六か月ほどで、それまでとの変化を生徒自身が日々の学習で実感できるようになり、概ね六か月から一年ほどで試験の結果など他者が見ても明らかにその変化に気付けるようになる科目ですが、相談を受ける度にその時自分にとっての最善をつくしてきました。少し教えるだけで良い学習サイクルを自分で形成していけるようになった生徒から、最後まで国語に悪戦苦闘した生徒まで、それは一人一人みんな顔つきも声も背格好も違うのと同様に当然のことです。だから、これから私がお話ししていくことは「オレの言うやり方でやれば、誰でも国語が得意になる」などというものでは決してありません。

 しかし、中学受験は十一歳、十二歳という人生におけるほんの入り口において行われるものです。自分たちの子供時代を思い出してみれば分かるはずですが、小学六年生という段階は人間としてまだまだ無知で未熟な状態です。それぞれが未だ伸ばし切ることのできない部分をそれぞれの組み合わせで持っている状態で日々を生きていることがむしろ普通な訳です。重要なのは苦手だからといって諦めないこと。受験に間に合わなさそうだからといって努力の手を緩めないこと。受験の後の人生の方がずっとずっと長いのですから、努力し続けていれば自分がブレイクスルーできる地点が必ず訪れます。

 国語が最後まで苦手科目のまま受験を終えた生徒が中学や高校に入ってひょっこり訪ねてきてくれることがよくあります。すると大抵「今は僕(私)、国語(現代文)が一番得意なんですよ」とうれしいことを言ってくれるのです。生徒の言うことには、中学に入って一年か二年経ったある日、学校の授業を受けていてふと「あれ、今先生の言ったことってZukki先生が言ってたことと同じじゃん」と、五年生や六年生の頃に受けた私の授業でサッパリ分からなかったことがいきなり分かってしまったらしいのですね。すると、学校のテキストやプリントの文章を読んでいても、「あ、これもZukki先生が言ってたな。これも、これも・・・」とタイムカプセルの蓋が次々と開かれるように気付きの連鎖が起こり、しばらくするとそれがあたかも自分が始めから知っていたことであるかのように使えるようになるのだそうです。それは、本人にとってもめくるめく奇跡の中に身を置いているかのような体験なのだそうで、「自分が世界に向かって大きく開かれていくのを感じた」というようなことを、教えていた塾や校舎を問わず様々な時代に教えていた生徒たちが伝えに来てくれる中で私が感じたのは、「生徒の能力にはそれぞれの開花時期というものがある」ということ、「大事なのはその時がくるまで丹精に手入れを怠らない」こと、そして、「大人の都合でそれぞれの開花時期に格付けをしてはならない」こと、でした。因みに彼らの多くは大学受験の時には予備校で現代文の講義は受講せず、ほぼ学校の授業だけで合格していきました(最近だと「林修先生の授業は面白そうだから趣味で聴きに行った」という生徒はいますが、「趣味で」と言えるようになるとは誠に脱帽です)。「もう一度Zukki先生の授業を受けたいですねえ」と、彼らの中で思い出がかなり美化されているのは面映ゆいのですが、私は生徒たちから逆に教えられ続けているように感じています。

 私が今後この場を借りてお話ししていくのは、「いついつのテストで偏差値○○を取る」とか「○○中の合格を保証する」「受験で圧勝する」とか、集客力満点の話ではありません。ですから、即効性のある裏技を効率よく身に付けることが勉強の極意であると信じる方にとってはほぼお役に立てないと思います。しかし、日々の生活の中で「お母さん、国語って面白いね。なかなかうまくいかないから逆に燃えてくるよ」、「お父さん、このテキストの文章読んでみてよ。すごく面白いから。この話はどういう話かというとね・・・」と、子供が生き生きとした眼で語りかけてくるのを見て「ああ、中学受験を目指してみてよかった」、「我が子が日々自分から机に向かう姿を見ることができて本当に嬉しい」と親としての幸せを感じることに共感や憧れを抱く方には、我が子を信じて長い受験生活を完走する智慧と元気の素となるお話をお届けすることをここにお約束いたします。また、そのように「本気で」国語の学習に取り組むことは、中学受験を俯瞰して見た場合に数々の良い効果を生み、仮に国語の試験の成績という表層的な数値に変化がなかったとしても、確実に大きく志望校の合格へと結びつくということもお話ししてまいりたいと思います。重ねて、これからどうぞよろしくお願いいたします。

Zukkiとは一体何者か?

『他己紹介文』by 山根克宏

 Zukkiと私は、某大手塾でお互いに文系科目を担当する同僚として出会いました。時は流れ、私は独立して中学受験指導専門ポルタの代表として奮闘中。一方のZukkiは、複数の有名進学塾で難関中合格者を高精度で出し続ける国語講師として、あるいは各種模擬試験の問題作成者として大活躍。「中学受験の林修」と言っても過言ではない実力を持つZukkiは、仲間うちでは「師匠」と呼ばれ、憧れと尊敬を集めています。同業者である我々が、彼の何に憧れ、どこを尊敬せざるをえないのか?これから始まる彼の連載を読んで頂ければ充分に理解していただけるはずです。彼の連載に描かれることのほぼ全てはポルタの想いでもあります。怒涛のZukki節に、乞うご期待!!

 最後に、幼少期にヴァイオリンの英才教育を受けていたZukkiは、洋楽からサザンまで完璧なリズムで歌い上げるカラオケの帝王であり、寅さんの物真似をさせたら右に出る者なしの御茶目なKOオールドボーイであることを付け加え、20年来の盟友であるZukkiの他己紹介文とさせていただきます。

ポルタ代表 山根克宏