国語を究めてみませんか⑤

2024年7月17日

 こんにちは、Zukkiです。少し間が空いてしまいました。本業でも忙しい時期に突入してしまいましたので、どうかお許しください。夏は夏でこれまた大変ですが、それを言い訳にせず頑張ってお届けしたいと思います。

 さて、国語の世界で自分が好きになれるものを見つけたら、それをどう学んで力にしていくかという話に移りたいと思いますが、その前に「国語の力って何?国語ができるってどういうこと?」という話をしておきましょう。この話をしておくと、自分がどの段階でつまずいているのかも分かりやすいですし、自分が面白いと思えるものをどこから探せばいいのかもイメージが湧きやすくなると思います。そして、受験が終わってからの国語の勉強にも役立つでしょうし、何と外国語の勉強にも応用できます。大学受験で最も重要な科目が英語である時代はまだまだ続くでしょうから、今から話すことをよく覚えておいてください。

 「国語力」は地上三階地下一階で構成されている建物に喩えることができると考えていいと思います。国語が苦手だという状況はこの国語力という名の建物が傾いている状態だとイメージすることができる訳で、すると、どこの部分の建て方が甘くて傾いているのかを発見することができますし、そこから手を打っていけば建物の倒壊という最悪の事態も防ぐことができるということですね。家でもビルでもいいので、地上3階地下1階の建物の図を描いて、そこに私が今から言う要素を書き入れていくといいでしょう。

 まず、1階の部分は、「語彙力と周辺知識力」です(具体的にどういうことかは後述します)。つまり、ある程度の様々な知識がないと、中学受験を想定した文章は読んでもよく分からないままだから、知識を身につけることがどうしても必要になるということですね。

 次に、2階の部分は、「一定の長さからなる文章を読むという経験値」です(これも詳しくは後述します)。どんな文章を読んだか、理解できたか、その経験の中にある文章はよく理解できる可能性が高く、その外側にあるものは何が何だかサッパリ分からないことになりやすいということですね。人間は経験の範囲でしか物事を本当に理解することはできないと言われますから、どのような内容の文章を今までに読んできたか、その幅の広さや奥行きの深さは、一度も読んだことがない文章を前にした時に大きな差となって表れるのです。

 そして、この1階と2階の部分が、本来の国語力だと思って差支えないと私は考えています。この二つは、自分の命がいつか尽きるその日までずっと自分の財産としてついて回り、大人になってもそれらを豊かにし続けることで自分の人生の幸福度はどこまでも上がっていきます。たとえお金がなくても、友達がいなくても、自分の夢が何一つ叶わなかったとしてもポケットに一冊の文庫本があれば、この上もない幸福に満たされることを可能にする力が本物の国語力だといってもいいでしょう。一人一人の能力や成長曲線には個人差がありますから、他の人と比べることをせず、過去の自分よりも今日の自分が豊かになっていることを大事にしながらこの二つを育てていくことが人生においては何よりも大事だと私は思います。

 それでは、なぜ三階と地下一階があるのかというと、それは入学試験があるからです。中学受験の場合、小学校卒業を控えた1月2月に試験のほとんどが集中し、チャンスはその1回限りというタイムリミットがあるので、その現実に対処する力も中学受験をするならば必要になります。つまり、建物の三階にあたる部分は、「制限時間内に試験の答案を作成する力量」です。試験には必ず制限時間があり、その中で中学受験では平均して五千字から七千字程度の文章を読み(中には一万字を超える文章を出す学校もあります)、その上で数多くの設問に答えなければいけません。国語は文章の理解度と設問の正答率が比例する科目なので、適当に読んでも当然うまくいくはずがありませんが、丁寧に読めば時間がかかって設問を解く時間が足りなくなります。国語の試験はこのような「ムリゲー」的要素に満ちているため、「制限時間内に文章を丁寧に読み、その上で設問に数多く正解する」という矛盾を解決して合格答案を作成する力をつけることも受験期には必要になります。そして、それら3層に渡る力を強く支えるため、強く育てるために地下一階に相当する部分があるのですが、これは最後にお話しした方がいい要素なので、今は触れずにおきます。

 このように考えると、「国語の勉強」として大人たちからやれやれと言われるのは三階に相当する部分であることが多いのではないでしょうか。しかし、どんなに3階の建築を頑張っても、1階や2階のつくりがお粗末であれば建物は傾き、そのうち倒れてしまいます(そもそも3階の建築の精度は1階2階の建築の精度を超えることはできません。どんな文章なのかよく分からないのに問題が解けるという怪現象は発生し得ないからです)。国語が苦手だという人は思い切って3階部分は一旦忘れて、一階二階の再建築にあたる部分から自分が面白いと思えるものを見つけると良いのではないでしょうか。