ライバルに差をつける算数の磨き方

2022年2月14日

テキストの「解き方」にたよりすぎてはいけない

 算数の成績が伸びない原因は様々で一概には言えませんが、よくある誤解は、「解き方を知らないから解けない」というものです。もちろん、速さや円周率がらみの問題はその定義を知らなければ解けません。しかし、そもそも「知らない」ということと「解けない」ということは別次元の問題です。なぜなら、ほとんどの問題はあてはめ続ければいずれ答えは出るからです。もし、定義は知っているのに「知らないから解けない」というのであれば、それは試行錯誤が足りないということです。いったんは自分で時間をかけて考えてみる経験をしたうえでないと、「解き方」の背景を理解しないまま丸暗記に走ることになります。まずは自力で考え続ける粘り強さが必要だと言えるでしょう。

 とはいえ、多忙な受験生は算数の一問一問に多くの時間をかけられません。そこでおすすめしたいのが、家庭学習に優先順位を付けることです。ひとまず、知識を覚えれば終えられそうな科目を優先しましょう。そして残った時間で算数をやることになるのですが、その際、1ページにつき10分までというように制限時間を設けるとよいかもしれません。難問はスキップすることになりますが、解けそうな問題に時間いっぱい集中して自力で取り組むだけでも一定の効果が得られます。

 また、基本の「解き方」を全てマスターできたとしても、問題はそこから先です。実際の入試で合否を分ける問題は、ベースとなる典型題をひねっていたり、複数のパターンを組み合わせたものだったりします。そうした見かけ上のややこしさにまどわされず、今ある知識から積み上げて対処できるかどうかが分かれ目なのです。

「当たり前」の感覚から実力を積み上げる

 したがって、大切なのは個々の解法パターンの暗記ではなく、「要するにあの問題もこの問題も根本的には同じだ」という感覚を身につけることです。多くの塾が、中学受験の算数にはたくさんのパターンがあって、特殊なワザを習わなければ誰にも解けないかのような演出をしています。でも、それに騙されてはいけません。つるかめ算、いもづる算、年令算などと言っても、結局は表を書けば簡単に整理できます。食塩水や平均の問題も面積図を理解していれば同じものです。仕事算やニュートン算も要は速さの問題です。このように、なるべく少ない道具を色々な問題に応用する力こそが算数の地力なのです。

 そして、この力は日常にあふれている「当たり前」の感覚を頼りに出発すれば必ず積み上がっていきます。ここでいう「当たり前」とは、熱いお湯と冷たい水を混ぜればぬるくなるとか、ケーキを6等分するより8等分する方が一切れが小さくなるとか、そういったレベルのことです。日々の生活のなかで自然と身につくはずの感覚だからこそ、買い物やドライブに連れて行ったり、一緒に料理したりといった体験の機会を惜しまないでほしいのです。

 また、一つの問題に対して複数の解法を使って説明できることも重要です。テキストの「解き方」は、本当はいくつかある解法のうちの一つにすぎません。自分なりのアプローチが多少手間のかかるものだったとしても、それも立派な考え方の一つです。ライバルの考え方を聞いて新たな着想を得たり、逆に同級生に解説してあげたりするなかで自分の理解も深まり、だんだん一つの問題に対して色々な角度から検討を加えられるようになります。そうやって磨かれていった算数の地力は、他科目にも好影響を与え、合格を引き寄せる強力な武器となるのです。