国語を究めてみませんか③

2024年5月28日

 こんにちは、Zukkiです。

 中学受験の国語は「テスト対策という予行練習」通りにいかない科目なので、日々の学習の目的をテストの成績を上げることに据えることをひとまず止めてみたらどうか、という話をしました。

 では、何を当面目的とすればいいのかを考えるために、一旦中学受験の学習から離れて「物事の上達」、その原理を考えてみましょう。

「そんなに勿体ぶらずに大事な結論のとこだけチャチャッと教えてよ」

 そう思ったそこのアナタ!そういう発想自体が自分の国語力を貧しくしてしまいます。国語とは、第一に言葉を使って外界のものに触れることであり、自分の心の中を覗き込むことだからです。「どうすれば国語が今よりもできるようになるのか」、この文章を読みながらあれこれと自分でも考えを巡らせる時間を惜しんで「何か上手く行きそうな方法」に飛びつくだけでは、自分自身や現実を変えることはできません。逆に、そういう自分にとって大事なことを自分自身の頭と心で考える時間を持つこと、そこで得た着想を実行に移してみること、その積み重ねだけが、自分を「なりたい自分」の方へと導いてくれるのです。私はその立会人であり、時折道案内をするPORTERだと思ってください。

 さて、どんな世界でも素晴らしい活躍をする人たちがいます。最近なら大谷翔平選手や藤井聡太八冠は本当に有名ですが、彼らはなぜそんなに素晴らしいパフォーマンスを発揮するのでしょうか。生まれつきの才能?人並み外れた努力?もちろんそれもあるでしょう。でも、一番大事なことを忘れていませんか。彼らはとにかく「三度の飯より野球が、将棋が大好き」なのです。寝ても覚めても野球野球野球、将棋将棋将棋、なのですね。若き天才ピアニストとして世界的に活躍している藤田真央さんも、睡眠や食事などの時間以外はずっとピアノを弾いていて、和音やタッチの響きの検証に何時間かけても一向に飽きないそうです。つまり、どの世界でも「何かの手段として割り切ってとか、仕方なくとか」そういう了見で取り組んで成功している人はいない訳です。「お金持ちになりたいから割り切って野球をやっている大谷選手」や、「女性にモテたいから嫌々フィギュアスケートをしている羽生結弦選手」なんて想像できるでしょうか。そういうことです。

 何にせよ、今よりも自分が取り組んでいるものの上達を本当に望むのであれば、彼らのようなトップクラスの人たちの抱く数百分の一でもいいから、対象への愛を持つこと、育むこと、そうでありたいという意志を持つことが上達への第一歩となります。我々が取り組むのは国語ですから、「国語愛」です。みなさんの心には「国語愛」はありますか。どうでしょうか。

 俳優の江口洋介さんが若い頃に主演したテレビドラマ『ひとつ屋根の下』で、江口さん演じる達也の名台詞に「そこに愛はあるのかい?」があります。常にそれを自分に問いかけ、そこに愛がなければ何も変わらないことを肝に銘じ、自分が国語を好きになれるポイント、面白いと思える瞬間を何でもいいから見つけていくこと、はじめはほんのひと欠片の愛でもいいから、それを大事に大きくしていける何かをし続けること。テストの成績向上はその積み重ねの向こう側に、結果としてある日ひょっこり訪れるものだと、私は経験的に確信しています。

 次回はその「どこに国語の面白さを見つければいいか」についてお話ししましょう。