国語を究めてみませんか⑨

2025年6月19日

 こんにちは。Zukkiです。

 「テキストをやる」という発想は、一定の範囲を終わらせることが目的化しやすく、結果的としてその内容を事務的に処理することに時間を使いやすくなってしまうという話をしました。このように日々を過ごす生徒は、出題範囲が示された上で毎週行われる漢字テストのようなものでは点が取れますが、それは最近やったばかりのものがほぼそのままの形で出題されるからだという落とし穴に気づきにくくなります。逆に「点が取れている」という事実が「自分はちゃんとやっている⇒できている」という思い込みを加速させることすらあるので注意が必要です。

 「漢字練習はしているし、漢字テストの点は取れているのに読解分野はどうも苦手で・・・」という場合はこの点を疑ってみる必要があります。語彙とは「読める、書ける、意味が分かるだけでなく、自分がものを考えたり、他者の話を理解したり、他者と伝え合ったりする時に使いこなせる言葉がどのくらいあるか、その幅と奥行き」を意味するのですから、何のために漢字や語句の勉強をするかといえば、「実際の入試でそれが出るから」という答えは現象をなぞっているだけで、本質はもっと別のところにある訳です。

 中学受験で出題される文章を理解するのに必要な語彙は実年齢よりも二、三歳上というところが相場です。つまり、公立学校の教科書ならば中二から中三のものを読んで理解できるのに十分な語彙が必須であり、目指す学校が難しければそのハードルは更に上がります。国語の学習において漢字や語句文法が基礎分野として設定されているのはそのためです。受験するのは小学生ですから、だれでも「テストに出る」という理由でやり始めるのはよくあることですが、実はそれはきっかけでしかなく、本当の意味で「なぜそれをするのか」について気付きを得た生徒が「テキストでやる」学びへと舵を切ることができるのですね。

 では、「テキストでやる」とはどういうことか。これは、「テキストをやる」の逆を考えれば、そのやり方も見えてきます。

 まず、基本的な考え方を「テキストをやる」から大きく方向転換すると、以下の二点が鉄則として浮かび上がるはずです。

  • 早く終わらせようとしてはいけない。
  • 次のテストのために勉強してはいけない。

 「何を馬鹿なことを!」と思うかもしれませんが、「次のテストのためにテキパキ終わらせる」という方針で読解分野が上達していないのであれば、今後もその方針で事態が改善する可能性は低いと言わざるを得ません。俗にいう「コンコルドの誤り」に陥る前に思い切って発想を転換しましょう。

 さて、実は先の「二箇条」ですが、禁止事項が示されているだけで「では、どうすべきなのか」が示されていません。

 それは、「ああ、こうやってやればいいのか!」という気付きは先に答えが示されるよりも、実践において実感した方が身につきやすく、自分で応用もきかせやすいからで、敢えて書かずにおきました。ここからは皆さんが少しですが実践する時間です。

 たとえば、塾の知識分野のテキストに以下のような例文があったとします。カタカナを漢字にして答える書き取り問題です。

山根先生のネツベンに思わず心を動かされる。

 皆さんなら、これをどのように学習しますか?

 これを次回までの宿題として考えてみてください。実際に「自分ならこんなふうにやる」という学習案をノートに書いてみてもいいでしょう。

 もうお分かりかと思いますが

「ネツベンは熱弁!はい覚えた、よーし次の問題!」

 これは「テキストを」やっているだけにすぎず、実は一番やってはいけない方法です。

「答えを覚える以外にやることなんてないじゃん」

 という感じ方や考え方をしているうちは、やはり国語の攻略は至難であり、実は周囲の大人もそのような了見に陥らないよう十分注意する必要があります。子供は経験と環境の生物であり、周囲の大人の価値観に大きく影響されるからです。

 では、次回の解決編でお会いしましょう。